読みやすさのために適宜改行や強調(太字化)を加えています。

イベント参加予定

【イベント参加予定】2024/5/19 文学フリマ東京38 / 2024/5/26 COMITIA 148

2023/10/17

「九十秒間じっと待ちます。」

 

文庫が出ていますが、図書館で単行本を借りて読みました。


脳がとても批判的で非生産的な、
あるいは制御不能のループを働かせているとき、
わたしは感情的・生理的な反応が去っていくのを九十秒じっと待ちます。
それから、脳を子どもの集まりみたいなものだとみなし、誠意をもって話しかけます。
「いろんなことを考えたり、感じたりするあなたの能力はありがたいわ。
でもわたし、この考えや感じには、あまり興味がないの。
だから、もうこの話はおわりにしてちょうだい」。

ようするに、特殊な思考パターンとのつながりを断ち切るよう、
脳に頼んでいるわけです。
もちろん、人によって頼み方はちがうでしょう。
たとえば、「キャンセル! キャンセル!」という人がいるかと思えば、
「オレは忙しいんだよ!」と叫ぶ人もいるでしょう。(…)

――ジル・ボルト・テイラー 奇跡の脳』(竹内薫訳・新潮社)p.185-186
リンクは現在出ている文庫版ですが、引用ページは自分が図書館で読んだ単行本のものです。


*     *     *


前半は自ら脳出血を患った神経細胞学者の体験談で、読む前はその部分のイメージだけで手に取りました。(脳梗塞で軽度の麻痺が残る家族がいるので、理解を深めようと思ったのです)進行する症状を、脳のどの部分のダメージか意識しながらの体験談はそれだけでも貴重です。

ところが、印象に残ったのは、後半にある上記のような「自分の脳のしつけ方」の部分でした。ネガティブな思考のループにはまってしまうことは自分もよくあるのですが、それを制御できるというのです。しかも宗教やスピリチュアル的な世界観を受け入れる必要なしに

(後半のトーンは少しだけスピリチュアルな感覚に踏み込んでいるように見えるので、読みにくいと感じる方もおられるかもしれません。自分は昔それ系も読んだほうなので(笑)それほど抵抗はありませんでしたが、逆に途中で「そっちにいっちゃうのかー」と心配にもなりました。でも「そういうのも脳がこう働くから」という基盤があってのお話だったので、逆に宗教やスピリチュアル系はその「脳の働きの発露」を説明するための「例え話のバリエーション」なのかな、という理解になりました)

とにかくやってみたら本当で(本の言葉遣いをまねるのではなく、とにかく「これは脳が暴走してるだけ。やめやめ。」と意識するようにしました。最近は慣れてきて、「左脳ストップ!」の一言です(笑))、完全ではありませんが「はまってしまう」前に止められることがかなり多くなりました。脳を「子どもの集まりのようなもの」という例えも新鮮で、そう客観視できると感情に飲まれるのを防ぎやすくなる気がします。「ものの見方、感じ方で世界が変わる」とはよく言われることですが、実践方法がこんなにシンプルに書かれているとは。

ほかにも共感したり(特に入院中の扱われ方。自分も違和感や怒りを感じた経験があるので)、貴重な知識になったりした部分は多くありました。(同じ病気を患ったことがない)自分自身にも役立つ本」で、予想外の一冊でした。