どこへ行こうと、ベテランを無視するのが仕事の原則だ。
彼らの知性は、足指のツメのように内側に向かってばかり成長している。
――キム・フィルビー『プロフェッショナル・スパイ―英国諜報部員の手記』 (笠原佳雄訳・徳間書店)p.140
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イギリスの有名な二重スパイ、キム・フィルビー本人による手記から。トルコに赴任した時に慣例に無いことをしてベテランに驚かれた、というあたりで出てきた言葉です。
先月あたり、体調を崩しておとなしくしていた時に、ふと手持ちの『国際諜報局』や『アナザー・カントリー』を見直したり、古いスパイネタのノンフィクションを拾い読みしたりが重なりまして、なんとなくレトロなスパイ系に関心が向いて行き当たった本です。
イギリスから見たら裏切者ですが、信念の堅牢さ・迷いのなさと、徹底的に実務家なのがある意味羨ましいくらい。フィクションではこういう「行動や現実の捉え方に迷いがない」キャラが普通に出てきますが、現実にこういう人物がいたのは驚いてしまう。共感できる言葉もけっこう多かったのが意外でした。上記もそのひとつ。言葉の端々に考え方が表れています。
今この人についての本を手に入れようとしたら、"ヒットメーカー"ベン・マッキンタイアーによる評伝、『キム・フィルビー かくも親密な裏切り』が定番だと思いますが、本人の言葉を読んでみたくて図書館で借りました。(なのでまた写真がこんな感じです)
「一次資料好き」としてはのどから手が出るほど手元にほしいですが、古書が高騰していて自分には無理すぎ! 図書館にあったのはラッキーでした。本自体の時代感も好みです。マッキンタイアーの本もいつの間にか文庫になっていたので、そのうち読んでみたいです。(今はとりあえず本人の本を読了して満足してます♡)
スパイつながりの余談ですが、私、「第五列」という言葉(▶Wikipedia)を知ったきっかけはたしか映画で、しかもコリン・ファースの台詞だった……というボンヤリした記憶があるんです。でも作品がわからなくて確かめたくなりました。で、いかにもそんな言葉を言いそうな役だった『アナザー・カントリー』や『裏切りのサーカス』を見直してみたのですが……そういう台詞は見つかりませんでした。(見落としでなければ)
この記憶はなんの映画だったんだろう。あるいは捏造記憶? 他に「第五列」とか出て来そうなスパイ系の出演作というと、とっさには『キングスマン』か『オペレーション・ミンスミート』くらいしか思いつかないんですが……これらは持ってないので見直すには再度レンタルしないと。(うーん……テレビでやってくんないかなっ(^^;))
わりかし「初々しかった」というイメージがあってアナカンかなーと思ったんですがねー……最近「記憶のあてにならなさ」に拍車がかかっていて、困ったもんであります☆