最初の二、三日は、
ネイグルの立てた潜水計画に厳密にしたがって〈ドリア〉に潜った。
見つからなかった。鐘はなかった。
その時点で、どんなタフなダイバーでも、
あきらめて引き返そうと考えただろう。
長さ二〇メートルの船で大西洋の外界に一日出ただけでも、
はらわたの表裏がひっくり返るほどの揺れを経験する。
長さ一〇メートルの栄光の浴槽(バスタブ)で四日が過ぎた。
が、全体像が見えている時は、
人間は簡単にはあきらめないものだ。
ロバート・カーソン『シャドウ・ダイバー 深海に眠るUボートの謎を解き明かした男たち(上)』(上野元美訳・早川書房)p.36
[2009年6月17日 (水)元投稿]
(「ココログ「としま腐女子のいろいろ読書ノート」より引っ越し)