奇妙なことに、時報が彼に新たな勇気を注入したようだった。
自分は誰も耳を貸そうとしない真実を声に出す孤独な幻。
しかし声を出している限り、
何らかの人目につかない方法によってでも、
真実の継続性は保たれる。
他人に聞いてもらうことではなく、
正気を保つことによってこそ、
人類の遺産は継承されるのだ。
彼はテーブルに戻り、
ペン先をインクに浸し、
書いた――
ジョージ・オーウェル『一九八四年〔新訳版〕』(高橋和久訳・早川書房)p.45
[2009年7月26日 (日)元投稿]
(「ココログ「としま腐女子のいろいろ読書ノート」より引っ越し)
☆じつは大好きな英国俳優ジョン・ハートやピーター・カッシングの主演作品原作でもあるので、そちらのご紹介も含めた感想を個人ブログの方にアップしております。ちょっと前の記事ですが、よかったら合わせてご覧ください☆
「人は愛されるより理解されることを望むものなのだろうか」/『一九八四年』新訳版
(牛乃の日記:2013/06/04)