読みやすさのために適宜改行や強調(太字化)を加えています。

2021/05/05

「魂ほど移動に時間のかかるものは無い」




あちこち駆けずりまわったり、
性急にぼくらの品物をそっくり別の場所へ移したり、
仕事を自分の気に入るように一分間で変えたりすれば、
ぼくらは必ず何かを失くしてしまう。

魂ほど移動に時間のかかるものは無い。

だから一度場所を変えると、魂と肉体が再会するには、
きわめて手間がかかる。

自分は敏捷だと思い込んでいる人々は、
わけがわからなくなってしまう。

多くの場合、魂が足を引っぱるので両者はなかなかうまく再会できない。


ジャン・コクトー『魂の操舵について』(秋山和夫訳・『ぼく自身あるいは困難な存在』所有・ちくま学芸文庫 p.148)


[2009年10月21日 (水)元投稿]
(「ココログ「としま腐女子のいろいろ読書ノート」より引っ越し)